IVRとは?コール業務自動化の仕組みとメリット、導入事例を紹介
メールやチャット、SNSなど企業と顧客とのコミュニケーションは多様化し、コールセンターやコンタクトセンターはさらに高度なオペレーションが求められます。その中で、これからも欠かせないコミュニケーション手段の1つである電話応対を自動化することで、オペレーターの負荷軽減と顧客満足度向上を両立させる仕組みとして注目されているのが、IVR(音声自動応答システム)です。
そこで今回はIVRとは何か、どのような機能があり、どういった成果、メリットが得られるのかといった基本的な知識から、当社が支援したIVR導入事例を交えて、その具体的な課題解決イメージを理解いただけるよう丁寧に解説します。
お客様に良質なカスタマーエクスペリエンスを提供する、効率的なコンタクトセンター運営を実現したい企業のご担当者必見です。
IVRとは
IVRとは、Interactive Voice Responseの略称。日本語では「音声自動応答システム」と呼ばれます。
顧客からの電話に人が応答するのではなく、自動音声によるガイダンスで案内。プッシュ操作で得た情報をもとに顧客が求める回答を自動音声で返答、必要に応じてオペレータに転送するといった仕組みです。
IVRが普及した理由
ご存じの通り、現在では多くのコールセンター、コンタクトセンターで利用されているIVRですが、その普及の背景にはオペレーターの慢性的な人材不足、定着率の低さがあります。
コールセンターやコンタクトセンターはカスタマーエクスペリエンスを象徴する重要な顧客接点である一方、受付窓口業務ではクレーム対応、営業電話業務ではノルマやガチャ切りなど精神的な負荷が高く、さらに対応には自社商材やサービスに対する高いレベルの知識も求められるため、運営各社は人材の募集と育成に苦労しています。さらに近年では顧客からの問い合わせチャネルの多様化、働き方改革への対応、コロナ禍に代表されるパンデミック対策としてのテレワーク化など、コールセンターやコンタクトセンターを取り巻く環境が大きく変化しています。
その中でIVRは、窓口業務の効率化とオペレーターの負荷軽減と共に、メンタルヘルス向上に貢献します。さらに待ち時間の削減やたらい回しの防止などで顧客満足度向上にも期待が高く、広く普及しているのです。
IVRの仕組みと主な提供機能
IVRには、電話業務の種類に応じて、以下のような機能があります。
<インバウンド(問い合わせ受付)業務向けの機能>
自動振り分け機能
顧客からの問い合わせ内容をプッシュボタンで選択してもらい、要件に合うオペレーターへ振り分けます。
折り返し電話予約機能
振り分け先の窓口の回線が混み合い、担当オペレーターに繋がらなかった場合、顧客に企業側からの折り返しの電話予約を自動で受け付けます。
音声録音機能
トラブル防止のため、会話の内容を録音する機能です。
ウィスパリング機能
オペレーターに接続する際、スムーズな対応を実現するために顧客の問い合わせ内容をあらかじめオペレーターに知らせる機能です。
タイマー機能
特定の時間帯や期間のみ予約を受け付ける際などに、音声ガイダンスの内容を特定の時間帯や曜日ごとに設定する機能です。
<アウトバウンド(発信)業務向け機能>
オートコール機能
同じ内容の電話を複数の相手先にかける際に利用する、指定した顧客に対し自動的に電話をかけ、自動音声を流す機能です。
アンケート機能
顧客に自動で電話をかけ、自動音声によるガイダンスでアンケートを実施。該当する番号のボタンで回答を受け付ける機能です。
IVR導入のメリット
このようなIVRの多彩な機能を活用することで、導入企業は以下のようなメリットが享受できます。
電話応対業務の効率化・リソース削減
IVRは機械音声による振り分けと自動応答により、オペレーターの応対および取り次ぎの業務負荷を軽減。結果として、対応人員リソースや教育研修にかかる時間やコストの削減につながります。これは大手企業やコールセンターなど規模の大きなコンタクトセンターはもちろん、中小企業オフィスや店舗など小規模な運営においても、実感しやすい効果と言えます。
保留・待ち時間の短縮
IVRは顧客側が問い合わせ内容をプッシュボタンで通知、担当部門へ振り分けを行うため、総合受付や代表電話への集中を防ぎ、回線混雑による待ち時間を短縮します。さらに、総合窓口から各担当窓口への取り次ぎ業務や待ち時間も削減。これらは企業側のみならず、顧客側にとってもスムーズな応対が実現するため、顧客満足度の向上にもつながります。
部署間でのたらい回し防止
IVRはよく起こりがちで顧客満足度を著しく毀損する、たらい回しの防止にも貢献します。あらかじめ問い合わせ内容と担当窓口を明確化し、それを自動音声による振り分けに反映することで、スムーズな応対が実現。むだな取り次ぎや折り返しの手間なども削減し、人件費の削減や人員配置の最適化にもつながります。
営業時間外での対応が実現
IVRは自動音声アナウンスにより、24時間365日の対応が可能。夜間や休日などの対応にリソースを割くことなく、オペレーターの働き方改革と共に、効率的で満足度の高いコンタクトセンターの運営を実現します。
キャンペーンなど営業戦略の実施が容易になる
IVRはキャンペーンなどの営業戦略への活用も有効です。一時的に問い合わせが急増することが予想される場合や、アンケートに応じて資料を提供したい場合など、営業戦略的にキャンペーンを実施したい時に、大量のオペレーターのリソースを確保できなくても、自動応対で工数を分散して実行可能です。
営業電話や迷惑電話などの対応負荷の削減
IVRはガイダンスによる自動応答機能で、営業電話や間違い電話、迷惑電話への対応負荷を削減します。これによりオペレーターや社員の業務負荷を軽減し、本来業務に集中しやすい職場環境を提供できるようになります。
IVR導入時の検討ポイント~オンプレミス型orクラウド型のメリット・デメリット
それではここからは、IVRを導入する場合の検討ポイントについて解説します。
IVRを実現するシステムには、オンプレミス型とクラウド型の導入方法があります。それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。
オンプレミス型IVR
サーバーなどの必要設備を自社内で保有、維持する方式です。サーバーがクローズドな社内に設置するためセキュリティ性が高いとされるメリットの一方、初期投資コストが高く、導入に一定の費用と時間がかかること、さらに運用負荷が高いため機能アップデートがしにくいことがデメリットです。
クラウド型IVR
インターネット上の外部サーバーで動作するシステムで、クラウドサービスとして提供されます。自社内にサーバーなどの機材を導入・構築する必要がないため初期費用が安く運用負荷も低いこと、スピーディーに利用を開始することができること、機能アップデートが容易な点がメリットです。一方、セキュリティ性がクラウド事業者に依存してしまうこと、従量課金で利用量に応じて費用が変動するため予算計画が立てづらい点がデメリットです。
IVR導入を検討する際には、自社の事業規模や利用目的、予算などを考慮の上、最適なシステムを選定しましょう。
IVR導入事例
サーバーワークスは、さまざまな業種、規模感のお客様企業へIVR音声自動応答システムの導入を支援してきた豊富な実績があります。ここからは具体的な活用イメージと効果が分かる、IVRの導入事例の一部をご紹介します。
IVR導入事例① ネクスト・モビリティ様
Amazon Connect×配車システムのAPI連携による自動音声予約で
高齢者の利便性を向上
バスやタクシーなど交通機関の深刻なドライバー不足問題を解消するべく、同社は2019年に福岡市東区でAI活用型オンデマンドバス「のるーと」の運行を開始。2023年度には全国34カ所を越える広がりを見せる一方で、専用アプリ操作が苦手な高齢者などの方向けの電話予約窓口の運用に、課題を抱えていました。
そこで同社は有人オペレーターの電話予約では難しい24時間365日対応を可能とするべく、IVR自動音声予約システムの導入を決定。構築パートナーであるサーバーワークスと共に、海外製配車システムとのAPI連携が可能なAmazon Connectによるシステムを構築。以下のような成果を実現しました。
導入前の課題
- オンデマンドバスの電話予約利用者の利便性を向上したい
- 営業時間の制約を受けない電話予約システムを整備したい
- 有人対応オペレーターの負荷を軽減し、業務の効率化を図りたい
課題解決の成果
- 24時間対応の自動音声予約の実現
- オペレーターの負荷軽減、業務効率の向上
- 競合他社との差別化、サービスの付加価値の向上
- 配車システムとのAPI連携ほか、他エリアへのサービス展開のノウハウの獲得
お客様の声
「サーバーワークスさんは初期段階からきめ細かなヒアリングシートを使って要件を掘り下げるなど、プロジェクトに対する意欲や本気度が、他のベンダーとはまったく異なりました」
「自動音声予約サービスの開始後も、サーバーワークスさんには当社内で問題を解決するためのAmazon Connectのエラーログの集約や、サービスを新エリアに横展開する際に必要な電話番号の追加マニュアルの整備など、さまざまな支援を継続してもらっています」
IVR導入事例② パルシステム様
IVR(自動音声対応)により注文受付の無人対応化を実現
急増する会員数と発注業務にも効率の良い対応が可能に
国産・産直・環境にこだわり、安全・安心な食材を届ける生活協同組合の宅配サービスを展開するパルシステムでは、コロナ禍で入電が4~5倍に急増し、有人スタッフによる対応に限界を感じていました。
そこで同社は従来の有人による注文処理フローを踏襲、IVRにより無人対応を実現する「パルシステム自動電話注文ダイヤル」をサーバーワークスと共に構築。会員からの電話プッシュ通知で組合員番号・注文番号を取得、それをオンプレミスの基幹システムとAPIで連携する仕組みにより、以下の成果を実現しました。
導入前の課題
- 注文電話が特定時期、特定時間に集中し、混雑してしまう
- 注文受付オペレーターの負荷が高く、混雑時は受注機会をロスト
- 人が対応すると電話注文可能時間の制限があり機会損失になる
- 他の方式も用意しているが、「電話」注文は今後も必要
課題解決の成果
- オペレーターの電話注文受付対応を前年比約2/3に削減
- コロナ禍で会員10万人増、注文数前年比140%も、スムーズに受付処理できた
お客様の声
「サーバーワークスはAmazon Connectについてはもちろん、他のAWSに関する知識やノウハウも豊富で信頼ができました」
「運用面の整合性を取るところは、現場実務者を含めサーバーワークスにサポートしてもらいながら構築しています。結果的にはシンプルで分かりやすい仕組みが構築できました」
IVR導入事例③ ファミリーマート様
IVR×顧客管理システム連携により、業務負荷を軽減しつつ
アプリユーザーの満足度を向上
同社のDX戦略の一環であるスマートフォンアプリ「ファミペイ」。累計ダウンロード数1,500万を超える人気アプリの運用課題の1つが、コールセンターに寄せられる暗証番号のロック解除依頼への対応でした。同社は対策としてサーバーワークスと共にAmazon Connectを活用したロック解除用IVR(自動音声応答システム)を構築。結果、ユーザーによる自動解除率が約80%となり、コールセンターの負荷を大幅に軽減することに成功しました。
導入前の課題
- 暗証番号ロック解除依頼が急増、コールセンターの応答率が低下してしまった
- オペレーターの業務負荷が高まり、人的コストも増加
- 煩雑な手続きにより、アプリユーザーの満足度も低下してしまう
課題解決の成果
- IVRの構築によりユーザーによる自動解除率が約80%に向上
- キャンペーン時に低下していたコールセンターの応答率が改善
- IVRの継続的な機能強化により、アプリユーザーの満足度が向上
お客様の声
「サーバーワークスの提案は、専用の電話番号でロック解除依頼を受け付け、自動音声でユーザーの個人情報の入力を案内するものです。Amazon Connectは初めて利用するサービスでしたが、複数の提案の中でユーザーのストレスが最も少ないのが、サーバーワークスの提案でした」
「API連携では高度な技術知識が要求されましたが、サーバーワークスはAWSの知見に加えて、他のベンダーが見えていない技術領域に関しても、的確にサポートしてくれました」
サーバーワークスのIVR導入支援サービス
このように、サーバーワークスは多種多様なIVR音声自動応答システムの導入を支援しています。ここからはその一例として、Amazon Connectを利用したアウトバウンド業務自動化ソリューションをご紹介します。
オートコール導入サービス for Amazon Connect
Amazon Connectオートコールは、Amazon Connectを利用した、アウトバウンド業務自動化ソリューション。自動架電ソリューションを低コストで実現します。
架電先電話番号リストへシステムからの自動架電を実現することで、オペレーターの稼働率を最大化します。
Amazon Connect(アマゾンコネクト)とは、AWS(Amazon Web Services:アマゾンウェブサービス)が提供する、クラウド型CTI、コンタクトセンターシステムです。コンタクトセンターに必要な機能がすべてクラウドで提供されており、低コスト・短納期での運用スタートが可能であるなど、従来のコンタクトセンターシステムが持つ多くの課題を解消する、画期的なサービスです。
すでにAmazon Connect環境を構築済みの場合は、既存環境への導入が可能。Amazon Connect未導入の場合でも、サーバーワークスの「Amazon Connectミニマムスタートプラン」によって低コスト・スピーディーな構築が可能です。
- コンタクトセンターでお客様に上質なカスタマーエクスペリエンスを提供したい
- オペレーターの業務負荷が高く、採用・定着率に課題を感じている
- 少ない人数で確実な成果を挙げる仕組みを構築したい
このようなお悩みを感じている企業のご担当者は、ぜひこの機会にサーバーワークスまでお問い合わせください。