ベンダー頼りを脱却!AWSを活用した「IT内製化」を実現するには?
企業のクラウドプラットフォームのデファクトスタンダードとなったAWS(Amazon Web Services)。その一方、「DX推進に向けてAWSを積極的に活用したいが、外部ベンダー任せの現状に不安がある」「人材確保が厳しくなる中、社内のIT人材を運用作業ではなく、より経営に貢献する活動に注力させたい」―そんな声を、よく耳にします。
AWSはさまざまな業務課題を解決するための提供サービスや機能が豊富である反面、必要なものを取捨選択して使いこなすのが難しく、最新情報をキャッチアップするのも大変。そのためどうしても外部ベンダーに依存してしまい、どうしたら内製化できるのか、お悩みの企業も多いと思います。
そこで今回は、AWSを活用した「IT内製化」の実現方法を、サーバーワークスが提供する支援サービスを含めて解説します。
内製化が求められる理由~「2025の崖」・DXとの関係
すでにご存じの方も多い「2025 年の崖」。複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合に想定される、国際競争への遅れや我が国の経済の停滞に警鐘を鳴らす言葉です。
提唱されたのは、経済産業省が発表した「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」。この資料では、現状のまま日本の国際競争力が低下した場合の想定として、2025 年以降、年間で最大約 12 兆円もの経済損失が発生すると予測されました。
そして、この状況を回避するためにDX(デジタルトランスフォーメーション) の必要性が説かれ、実際に多くの企業がいま、DXを推進しています。
前述の経済産業省の資料では、DXについて、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と説明されています。
これを要約すれば、DXとは、「データと AI や IoT 、 ICT 、クラウドサービスなどを含んだ総合的なデジタル技術を活用して、ビジネスを変革し、優位性を確立すること」と言えるでしょう。
DXの実現を阻む3つの課題
しかしながら、多くの企業はDXが思うように進まない現実があります。
DX を実現する上で、多くの企業では以下の 3 つの課題に直面します。
① ベンダー企業に頼らざるを得ない
まず1点目は、 ベンダー企業への依存です。日本企業の多くは社内業務が他社ベンダー頼りになっており、社内システムに精通する人や、プロジェクトマネジメントができる人材が不足している状況があります。また、既存の IT 業務は行えたとしても、IoT や AI 、アジャイルといった DX に必要なスキルを持つ人材が社内にいるケースは、決して多くはないでしょう。
② 老朽化したシステムを運用・保守できる人材の枯渇
2点目が、老朽化したシステムの運用・保守を担う人材が枯渇してきていることです。大規模なシステム開発を担ってきた人材の多くが定年退職を迎え、属人化していたシステムのノウハウが失われつつあります。とはいえ、先端的な技術を学んだ若い人材を老朽化したシステムの運用・保守にあててしまえば、モチベーションの低下に繋がり、離職のリスクが上がってしまいます。
③ IT エンジニアの確保が困難
3点目が、そもそも IT エンジニアの確保が困難ということです。経済産業省によれば、ITスキルを持った人材は2030年には最低でも約41万人、最大で約79万人の人材が不足すると推測されています。
加えて、日本では IT エンジニアの約 7 割以上がベンダー企業に所属している上に、少子高齢化の影響により新人の採用自体も年々難しくなっており、ユーザー企業がどのように IT エンジニアを確保し、教育していくのかは、大きな課題となっています。
このような課題を解決するための第一歩が、内製化という選択です。
「IT人材が足りないのに、内製化?」と不思議に思われるでしょうが、内製化こそが社内にいる限られたIT人材のリソースの有効活用と、IT人材の育成にもつながるのです。
内製化の必要性と、メリットとは?
まずは、内製化の必要性とメリットをしっかりと理解しましょう。
内製化の必要性を考える上で重要なことは、DXの本質を見極めることです。DXの本質は、「ビジネスをデジタル化すること」ではなく、「自社の提供価値を変革すること」にあります。
残念ながら外部ベンダーはITの専門家ではありますが、「丸投げしたら自社のビジネスを変革してくれる専門家」ではありません。ですので、どうしても自社での内製化を実現する必要性があります。
また、内製化というと「自社リソースですべてを対応すること」と誤解されますが、そうではありません。
内製化とは、「外部ベンダーへの"丸投げ"を脱却し、自社で"主導権を持つ"こと」です。
具体的に言えば、サービスや製品に用いられるアイデアや技術が実現可能かを確認する一連の検証作業=PoC(Proof of Concept=概念実証)を素早く立ち上げ、実現可能性と効果を見極めた上で、自社内のリソースでは足りない部分だけを外部ベンダーに委託する、「取捨選択」が行えるようになること。
さらに、その取り組みを通じてDXに必要な人材を育て、DX人財として確保することも可能となります。
それこそが、外部環境が大きく変化する今日のビジネス課題を解決する、内製化のメリットです。
内製化を進めるためのキーワード
では、どのように内製化を進めればよいのでしょうか?
内製化を、スピード感を持って実現させるためのキーワードは、「クラウド利用」と「アジャイル開発」です。
その理由を、以下に解説します。
①クラウド利用のメリット
1つ目のキーワード、クラウド利用について。
クラウドの大きな特長は、大きく以下の6点が挙げられます。
これらクラウド利用のメリットは、内製化を進める上で有効ですが、特に上の3つの特徴に着目してみましょう。
これまでご説明した通り、IT内製化を進めるメリットは、「ビジネス環境の急激な変化に対応し、本当に必要なものを取捨選択できる」ことです。クラウドを利用することで、最新のサービスインフラを低価格ですぐに準備でき、ビジネスをスモールスタートで素早く立ち上げることができます。
また、クラウド環境は最新の技術をすぐに利用可能。導入や設置に工数のかかるオンプレミス型に比べ、俊敏性も高いです。そのため、サービスを組み合わせて必要なものをすぐに作り上げ、その実現性と有効性を確認する PoCにも最適な環境が構築できます。
②アジャイル開発のメリット
2つ目のキーワードは、アジャイル開発です。
アジャイル開発とは、仕様や設計の変更がある前提で、初めから厳密な仕様は決めず、おおよその仕様だけで細かいイテレーション(反復)開発を開始し、小単位での「実装→テスト実行」を繰り返し、柔軟に開発を進めていく手法です。
従来行われてきたウォーターフォール型の開発と比較すると、
ウォーターフォール型:
要件定義>基本設計>詳細設計>実装>テストとリレー形式で開発を行うため、変更に対応しづらい
のに対し、
アジャイル型:
競合が新サービスをリリース、税率や法制度が変わる、新たな技術や脆弱性が発見されるといった、ビジネスを進める上で当初予定していたことが変化しても、状況に合わせて対応しやすい
というメリットが得られます。
IT内製化に必要な要素とは?
では、どのようにすれば内製化が実現するのでしょうか。
ここからは、サーバーワークスの考えるIT内製化に必要な要素を解説します。
それは、「正しい技術理解を身に付けること」と、その結果として「自己効力感を持てるようになること」です。
そのことで、「AWSを利用すれば、自分たちの課題が解決できる」と考えられるようになります。
自己効力感とは?
自己効力感とは、人が行動や成果を求められる状況下において、「自分は必要な行動をとって、結果を出せる」と考えられる力のことです。
この自己効力感が低い環境では、新たな課題にぶつかったときに
✔ 失敗を恐れて自分から新しいことに挑戦しない
✔ 行動に移すまでに時間がかかる
✔ 諦めるのが早い
✔ ネガティブな発言が多い
といった状態に陥ります。
一方、自己効力感の高い環境では、
○ 新しいことに積極的に挑戦する
○ 実行に移すまでが早い
○ ミスをしても過度に落ち込まない
○ 前向きな発言が多い
ため、解決策を素早く見出せるようになります。
では、どのようにすればこの自己効力感が持てるようになるでしょう。
AWSサービスの特徴と学習ステップを、ご説明します。
AWSサービスの特徴と、学習ステップ
AWS(Amazon Web Service)とは、Amazonが事業者向けに2006年から提供しているクラウドサービスの総称。世界でもっとも利用されているクラウドサービスです。
AWSにはコンピューティングやストレージ、機械学習支援から IoT など、240を超えるサービスが あります。さらに、AWSは年間数千回のバージョンアップや機能改修があります(2023年は3410回)。
そのため、AWSの豊富なサービスの中から自分で必要な機能を選ぶ、カスタマイズして使いこなすのは容易ではありません。また、サービスが年々増え続けていますので、常にAWSの最新情報をキャッチアップする必要もあります。
サーバーワークスでは、初学者のための学習ステップとして、以下をオススメしています。
ステップ1. AWS サービスの全体像を掴む(何のためのサービス?自社の課題にマッチする?)
ステップ2. チュートリアルの実践(使い方の概要を把握、使用感の確認)
ステップ3. テスト利用(学習したサービスを、実践に近い形で利用、懸念点や細かな仕様を把握)
ステップ4. 実戦への投入(課題解決に向けて実際に利用してみる)
ステップ5. 発展的利用(身に付けたノウハウを、他の課題へと応用する)
このステップを踏むことで、着実にAWSの「正しい技術理解を身に付ける」ことができ、「自己効力感を持てるようになる」ことで、DXの推進に欠かせないAWS内製化が実現します。
サーバーワークスのAWSトレーニング・内製化支援サービス
サーバーワークスが提供する内製化支援サービスの全体像は、以下の通りです。
<AWS公式トレーニング>と<サーバーワークス独自トレーニング>により、AWSの知識と実践テクニックを、段階的に身に付けることが可能です。
<AWS公式トレーニング>
■ Architecting on AWS オススメ
AWSを用いたシステムの設計や構築など基礎を体系的に学びます。またAWSクラウド利用のベストな設計パターンを学び、アーキテクチャ設計能力を習得します。AWS認定資格 Solutions Architect - Associate レベルの内容に応じたカリキュラム、ハンズオン形式で実際に操作しながらより理解を深める事ができます。
■ AWS Cloud Practitioner Essentials 初級
クラウドとは何か?AWS とは何か?など基礎的な内容を、全体的に習得したい方を対象とした入門者向けの学習コースとなります。クラウドの概念、AWSの各種サービス、セキュリティ対策、設計方法、利用料金、サポート問い合わせ方法について学習し習得します。基礎コースとなりますので、エンジニア以外にも営業部門・総務部門・管理職の方々にもお気軽に参加いただける内容となります。なおこのコースでは実習がありませんので、AWS Technical Esentialsコースと併せての受講をオススメします。
■ AWS Technical Essentials 初級
クラウド入門者向けにAWSの各種サービスやシステムの構築などを、より実践的にハンズオン形式で学ぶ学習コースとなります。ネットワーキング、コンピューティング、セキュリティ、データベース、ストレージなどAWS基本概念を実習を通して学習し習得します。Lab環境のハンズオン実習では、AWSを用いたシステムの構築を段階を経てレベルアップし体系的に学習を進めます。システム運用管理者や開発担当者などの方を対象とした入門的コースとなります。
上記AWS公式トレーニングはいずれも、Google Meetを使用したオンラインでのトレーニングです。
1社6名以上のご参加で個別に開催することができますので、お気軽にお問い合わせください。
※オフラインでの開催の場合は別途費用が発生します。
▶開講スケジュール https://www.serverworks.co.jp/services/aws_official_training.html
<サーバーワークス独自トレーニング>
以下は、サーバーワークスが提供する独自トレーニングです。こちらはAWS公式トレーニングを受講した方向けに、さらに実践的な中級~上級者向けとなっています。
■ サーバーワークス実践トレーニング 中級
AWSサービスを中心にハンズオン形式でトレーニングを実施し、より実践に近い形でAWSの使用感を深めていただけます。お客様の要件に合わせ、柔軟にトレーニング内容をカスタマイズ可能です。
- 内容詳細:お客様の目標や現状のレベルに合わせてカリキュラムを作成します。(以下は一例)
- サーバーレスやコンテナサービス等のハンズオンや基礎知識習得
- CloudFormationを利用したハンズオン
- CI/CDサービスを利用したハンズオン
- 実施方法:ハンズオン
■ アジャイル開発支援 上級
AWS はもちろん、 Python の基礎やアジャイルでのチーム開発の考え方などお客様自身でゆくゆくはPoC レベルの開発ができるようになるためのプランです。スポットでのトレーニングではなく、中長期的な取り組みでお客様の能力開発を支援します。
- 内容詳細:お客様の目標や現状のレベルに合わせてカリキュラムを作成 (以下は一例)
- Python の基礎、Git リポジトリの利用方法
- アジャイル開発とは
- 基本的な知識の構築ができた後はお客様が持っている課題をチームで解決していく
- 実施方法:ハンズオン、チーム開発
■ RFP チャレンジ 上級
AWS の利用をさらに自社で進めていきたい。設計を自社で行う、または生産性を上げるため、AWSのサービスの組み合わせ方・設計について経験を積みたいとお考えのお客様向けのプランです。
- 内容詳細:模擬的なRFP(提案依頼書)に対して、提案のためのAWSリソースの設計を受講者グループで行います。講師はRFPのポイントを解説しグループワークを支援、作成した設計図について質問・解説を行います。
- 題材例:Webサイト構築、Webサイトの性能・耐障害性向上、オンプレミスのサーバ移行
- 実施方法:グループワーク
おわりに
いかがでしょうか。今回は、AWS内製化を実現するために必要な要素と学習ステップと、サーバーワークスが提供する内製化支援サービスをご紹介しました。
各トレーニングの料金も含めた詳細と、実際にAWS内製化に成功した事例については、こちらの資料をダウンロードください。
デジタル活用によるDXでビジネスを変革、優位性を確立するためには、AWSの内製化が欠かせません。この機会に、サーバーワークスまでお気軽にお問い合わせください。