Amazon EC2とは|代表的な機能や活用のメリット、料金体系

この記事でわかること
- Amazon EC2はAWSが提供するウェブ上から気軽に利用できる仮想サーバーサービス。
- Amazon EC2を利用することで「業務効率化」「柔軟なスペック変更」「コスト最適化」「冗長化による信頼性向上」が図れる。
- Amazon EC2の料金体系は「オンデマンドインスタンス」「リザーブドインスタンス(RI)」「スポットインスタンス」に分けられ、利用状況や目的に合わせて選べる。
Amazon EC2は、アマゾン ウェブ サービス(AWS)が提供する仮想サーバーサービスで、手軽にサーバー環境を構築できます。AWSのサービスはブラウザ上からの設定のみで手軽に利用することができ、サーバーを調達する手間がかかりません。AWSにはさまざまな機能がありますが、本記事では最も汎用性が高く、あらゆる機能のベースとなるAmazon EC2の基本情報、主な機能、メリット、料金体系について詳しく解説します。
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※当記事は2024年12月に書かれたものであり、以後に展開された最新情報が含まれていない可能性がございます。
● Amazon EC2の基本情報
Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)は、AWSが提供するクラウド型の仮想サーバーサービスであり、企業や個人がインフラ管理の手間を削減し、柔軟なサーバー環境を構築できるよう設計されています。従来、サーバーを構築する際には物理的なハードウェアの調達、設置、設定が必要でしたが、Amazon EC2を使用することで、これらの手間をすべて省略できます。数分で仮想サーバー(インスタンス)を起動し、システムインフラの一部として利用可能です。
特に以下のような特徴があります。
柔軟なスケーラビリティ:需要に応じてインスタンスのスペックや台数を即座に変更可能。これにより、急激なアクセス増加やリソース不足に柔軟に対応できます。
幅広いユースケース:Webアプリケーションのホスティング、データベースの運用、バックアップや災害復旧システム、機械学習のトレーニング環境など、さまざまな目的で利用できます。
高可用性と信頼性:AWSは世界中にデータセンター(リージョンとアベイラビリティゾーン)を展開しており、冗長構成を取ることで障害発生時もサービスを継続できます。
●Amazon EC2の代表的な機能
次に、Amazon EC2の代表的な機能について、それぞれ解説していきます。
・インスタンス
Amazon EC2では、仮想サーバーの単位を「インスタンス」と呼びます。インスタンスは、ユーザーが必要とする計算能力や記憶容量に応じて、さまざまな種類を選択することができます。代表的なものとして以下が挙げられます。これ以外にも用途に特化したインスタンスが選択可能です。
汎用インスタンス:バランスの取れたCPU、メモリ、ストレージ性能を提供。
コンピューティング最適化インスタンス:高いCPU性能が必要なアプリケーション向け。
メモリ最適化インスタンス:データベースや大規模なキャッシュに適したメモリ容量。
ストレージ最適化インスタンス:大規模なデータ処理や高速なI/O性能を要求する用途向け。
・ セキュリティグループ
AWSでは、セキュリティグループという機能を使用して、インスタンスへのアクセスを制御できます。これは、仮想ファイアウォールとして機能し、特定のIPアドレスやポート番号を許可または拒否するルールを設定可能です。Amazon EC2でもこれらの機能が利用できます。
以下のような設定が一般的です:
特定のIPアドレスのみアクセス許可:業務用PCのIPアドレスからの接続を限定。
必要なポートのみ開放:SSH(22番ポート)やHTTP(80番ポート)のみを許可。
・ログイン管理
AWSでは、Amazon EC2へのログインを安全に管理するための仕組みが整備されています。一般的には以下の方法が利用されます:
SSHキー:公開鍵と秘密鍵を使用してインスタンスにアクセスする方式。サーバーごとにユニークな鍵を設定することでセキュリティが強化されます。
IAMロール:AWSサービス間の連携や特定のアクション(例:Amazon S3へのファイル保存)を許可する際に使用されるアクセス管理方法。
● Amazon EC2を利用することのメリット
Amazon EC2は、従来の物理サーバーの運用に比べて多くの利点を提供します。その中でも特に注目すべきは、「1.業務効率化」、「2.柔軟なスペック変更」、「3.コスト最適化」、そして「4.冗長化による信頼性向上」です。それぞれのメリットについて詳しく解説します。
1. 業務の効率化が期待できる
Amazon EC2を活用することで、サーバー環境のセットアップや運用にかかる手間を大幅に削減できます。
従来の物理サーバーでは、以下のようなプロセスが必要でした。
- ハードウェアの選定、調達、設置
- 電力、冷却設備などのインフラ整備
- オペレーティングシステム(OS)やミドルウェアのインストール、設定。
これに対し、Amazon EC2では数クリックでインスタンスを起動でき、すぐに利用開始可能です。AWS Management ConsoleやCLI(コマンドラインインターフェース)、Amazon APIを使用すれば、スクリプトや自動化ツールによる環境展開も実現します。
従来であれば開発環境の構築に数日から数週間かかっていた作業が、Amazon EC2では数分で完了します。また、テンプレートとして利用できるAmazon Machine Image(ミドルウェアの設定をパッケージ化してまとめてインストールできるようにしたもの)を活用すれば、同じ構成のインスタンスを何度でも迅速に再現できます。
2. 状況に応じたスペックの変更ができる
Amazon EC2の柔軟なリソース管理機能により、ビジネスやプロジェクトの変化に応じて、簡単にスペックを調整できます。
スケールアップとスケールダウン:需要が増えた場合にはCPUやメモリの大きなインスタンスに変更し、需要が減少した際には小規模なインスタンスに切り替えることでリソースの最適化が可能です。
インスタンスの停止と再起動:インスタンスを一時的に停止して、再起動時にスペックを変更できるため、柔軟な運用が可能です。
3. コスト最適化につながる
Amazon EC2の料金体系は、利用状況に応じた柔軟な選択肢を提供しており、コストの最適化を実現します。
オンデマンドインスタンス:短期間の利用や予測困難なワークロードに適しており、初期費用が不要です。長期間利用しない、開発環境やテスト環境の構築に適しています。
Saving Plans:特定のリージョン内でインスタンスファミリー(例: バージニア北部のM5)を契約することで、最大72%のコスト削減が可能です。コストを自動で削減し、使用量変更にも柔軟に対応してくれます。
リザーブドインスタンス(RI):長期契約によりコスト削減が可能。1年または3年単位での予約ができます。長期間の稼働が前提となる本番環境の構築に適しています。
スポットインスタンス:AWSの未使用リソースを低価格で利用でき、最大90%の割引が適用される場合があります。一時的な利用を想定する、バッチ処理を行う場合などに適しています。
これらのオプションを使い分けることで、企業は予算内で柔軟にシステム運用を行うことができます。料金体系については後ほど詳しく説明します。
4. サーバーの冗長化が容易になる
Amazon EC2では、アベイラビリティゾーン(AZ)を活用した冗長化構成を簡単に実現できます。AZは地理的に分散されたデータセンターで構成されており、システムの高可用性を確保するため分散して同時に利用することができます。
マルチAZ構成:アプリケーションを複数のAZにまたがって配置することで、1つのAZで障害が発生した場合でも、他のAZが稼働を継続します。
スナップショット機能:定期的なスナップショットを取得することで、インスタンスやストレージの状態を保存できます。障害発生時にはスナップショットから迅速にリストア(復元)することが可能です。
●Amazon EC2の料金体系
Amazon EC2は基本的に従量課金となっていますが、柔軟な料金体系を採用しており、さまざまな利用状況に応じたコスト管理が可能です。料金体系は大きく分けて「オンデマンドインスタンス」「Saving Plans」「リザーブドインスタンス(RI)」「スポットインスタンス」の4種類があり、それぞれの特徴や利用シーンに応じて選択できます。
4つの料金モデルのサマリー:
料金モデル | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
オンデマンドインスタンス | 柔軟だがコスト高め | 短期間の利用、テスト環境 |
Saving Plans | 自動かつ、柔軟にコスト削減が可能 | 長期間のシステム利用 |
リザーブド インスタンス(RI) |
長期間利用する事でコスト削減が可能 | 常時稼働するアプリケーション、データベース |
スポットインスタンス | 低コストだが停止リスクあり |
バッチ処理、大規模データ解析 |
これらを適切に使い分けることで、必要なリソースを効率的に運用し、コストを最適化できます。
1. オンデマンドインスタンス
オンデマンドインスタンスは、必要な時にインスタンスを起動し、使用した時間に応じて料金を支払うモデルです。
この料金体系の特徴は以下の通りです:
初期費用不要:使用を開始する際の追加コストが発生しません。
柔軟な利用:特定の期間だけリソースを利用したい場合に最適。
短期間のプロジェクト向け:予測しにくいワークロードや、一時的なテスト・開発環境の構築に適しています。
2. Saving Plans
Savings Plansは、特定のリージョン内でインスタンスファミリーを契約することで、コストを大幅に削減できる料金体系です。
このモデルのメリットは以下の通りです:
コスト削減:オンデマンドインスタンスと比べて最大72%の割引が適用され、長期利用でコストを最適化できます。
自動最適化:対象リージョン内でインスタンスファミリー、サイズ、OS、テナンシーを問わず、自動的に割引が適用されます。
インスタンス間の変更に対応:インスタンスファミリー内での使用量変更に柔軟に対応し、コスト効率を維持します。
3. リザーブドインスタンス(RI)
リザーブドインスタンス(RI)は、1年または3年単位でインスタンスを事前予約することで、大幅な割引を受けられる料金体系です。
このモデルのメリットは以下の通りです:
コスト削減:オンデマンドインスタンスに比べて最大72%の割引が適用される場合があり、長期利用でコストを最適化できます。
安定した予算管理:月額料金が固定化され、運用コストの見通しが立てやすくなります。
柔軟な選択肢:リージョン限定、インスタンスサイズ変更可能な柔軟性を持つ「コンバーチブルRI」も利用可能。
4. スポットインスタンス
スポットインスタンスは、AWSが未使用のリソースを低価格で提供する料金体系です。
以下の特徴があります:
低コスト:オンデマンドインスタンスと比べて、オンデマンド料金の最大90%割引が適用される場合があります。
一時的な利用に最適:データ処理やバッチジョブなど、停止しても問題ないワークロード向け。
柔軟な運用:通常のオンデマンドインスタンスと同様に利用可能。
●Amazon EC2の活用で効率的な運用を
Amazon EC2は、非常に汎用性の高いAWSの基幹サービスです。用途に合わせて活用することで、運用コストを抑えつつ、必要なリソースを効率的に利用できます。また、セキュリティグループや冗長化構成を活用すれば、安全性と信頼性を確保したシステム運用が可能です。クラウド化のメリットを享受しつつ、リスクを最小化するためにはサーバーワークスのシステム移行サービスがおすすめです。Amazon EC2を正しく理解し、自社のニーズに合った運用方法を採用することで、クラウド活用の効果を高めることができるでしょう。