2つのベクトルでDX推進を支援
DXの「シェルパ役」として顧客と共に山頂を目指したい
クラウド専業のクラウドインテグレーターとして、大きな存在感を示しているサーバーワークス。コロナ禍で厳しい経済状況が続く中、2021年1月15日にはマザーズから東証一部への市場変更を成し遂げた。その躍進の源泉となっているのが、クラウドによって顧客のDXを積極的に支援し続けてきたこと。既に幅広い業種業態において多くの実績を残している。AWS活用によるDX成功のポイントはどこにあるのだろうか。
「予測できない未来に対応するための
現実的な解がクラウド活用です」
クラウド専業インテグレーターとして
顧客体験の変革をサポート
桔梗原 今回のコロナ禍で世界的にDXが進んだと言われていますが、その中で日本企業はどのような状況にあると感じていますか。
大石 日本のDXは世界と比較して遅れていると感じています。ある調査では、コロナ禍でクラウド活用が進んだと答えた日本法人の割合は、28カ国中最下位という結果でした。その最大の理由として、テレワーク環境で意思決定することに慣れていなかったことが挙げられます。「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」はテレワークで行えたものの、重要な意思決定ができなかったためにDXが遅れたのでしょう。
桔梗原 DXそのものの概念も、この1年で大きく変化しました。以前はITの専門用語だったものが、今ではビジネス用語になり解釈の幅も広がっています。
大石 最近では社内向けのIT活用もDXと捉えるケースが増えています。DXが目指していたことは、デジタル技術で顧客体験を変えていくことでした。ただ、私自身はベクトルの向いている方向がお客様なのか社内なのかは、大きな問題ではないと考えています。最終的に社内のデジタル化によって、お客様に新たな価値を提供できるようになるのなら、DXと捉えてもよいのではないでしょうか。
桔梗原 なるほど。定義よりも結果を見るべきだということですね。ではサーバーワークスは、このDX推進においてどのような支援を行っているのでしょうか。
大石 大きく2つのベクトルがあります。1つは技術的なベクトルです。当社はクラウド専業のクラウドインテグレーターなので、お客様の「業種業態に適したDX」をAWSの活用で支援しています。もう1つのベクトルは「働き方の変革にポジティブな影響をもたらすこと」です。
既に数多く登場している
AWSによるDX成功事例
桔梗原 具体的な事例などはありますか。
大石 まず「業種業態に適したAWS活用」という側面では、2020年9月に発表したファミリーマート様の事例があります。ファミペイのインフラにはAWSが活用されており、その構築・運用をサポートするパートナーとして当社が選ばれています。
また2021年1月には、三越伊勢丹様において、モード2(SoE:System of Engagementを中心とした攻めのITシステム)開発基盤のガイドラインを策定したことも発表させていただきました。これはいわゆる「2025年の崖問題」への対応であると同時に、新たな顧客体験を生み出すチャレンジを加速するための取り組みでもあります。サイロ化された密結合型のシステムをモダナイズするとともに、そこでの開発方法のひな型を作っていこうとしているのです。ここに人を投入すればモード2の開発方法が自然と広がっていき、新たなサービス開発のスピードが高まっていくはずです。
一方の「働き方の変革」に関しては、AWSの2つのユニークなサービスを活用した事例があります。1つは「Amazon WorkSpaces」という仮想デスクトップの事例です。例えば横河電機様はコロナ禍でテレワーク環境を拡充することになりましたが、社内には設計データなどセンシティブな情報が多いため、自宅のPCで作業するのは問題がありました。そこでAmazon WorkSpacesの環境を1カ月弱で整備し、1400人が使える環境を整備しています。
もう1つのサービスは「Amazon Connect」です。これはクラウド型のコンタクトセンターサービスですが、再生可能エネルギー普及に向けた関連サービスを提供するNTTスマイルエナジー様はこれを活用することで、在宅でのお客様対応を実現しています。また、パルシステム様も巣ごもり需要で急増する注文に対応するため、このサービスの音声自動応答機能によりオーダー受付を自動化し、無人での対応を実現しています。
Amazon Connectの導入により、コールセンターのオペレーターを含め、すべての社員が大きな混乱もなくテレワーク環境下で導入前と同等の業務を実現した
桔梗原 これらの事例を見ると、クラウドの強さを改めて感じますね。その一方でクラウドセキュリティの懸念が取り沙汰されることも増えているようです。
大石 それはクラウドそのもののセキュリティというよりは、正しい利用方法の話だと思います。例えば2019年8月にAWSの大規模障害がありましたが、AWSが推奨する分散構成で構築されていたシステムでは、ほぼ問題なく業務を継続できました。セキュリティに関してもクラウド事業者がフレームワークを提示しており、これを正しく理解して適用すれば問題ありません。ただし、そのすべてを自社で行う必要はありません。これらのフレームワークは年々高度化しているため、社内で人材を抱えるのが難しい場合は、当社のような専門組織に任せることも1つの方法です。
より業種業態に特化した課題を
解決するサービスの提供も目指す
桔梗原 実際に2020年末時点でのAWS導入社数860社、取り扱ったプロジェクトは9400を超えるそうですね。
大石 それは結果にすぎません。私たちは山登りのシェルパ役であり、お客様がクラウドジャーニーの山を一緒に登りきることを重視しています。AWSを使うことで「DXを実現し、新たな価値を創出した」というお客様事例を少しでも増やしていくことが目標です。
最近ではテクニカルな案件だけではなく、クラウドで今の状況をどう打破するのか、どう会社を変革していくのかといった、より高次かつ抽象的な相談が増えています。これに対応するため、より業種業態に特化したチームによる問題解決にも取り組んでいます。昨年立ち上げた金融向けのコンサルティングチームはその1つです。最終的にはこのように多様なチームの集合体になっていきたいと考えています。
桔梗原 最後にDXに取り組む日本企業へのメッセージをいただけますか。
大石 今回のコロナショックの最大の教訓は、未来は予測できないということです。予測できないことに対応するには、柔軟性を高めていかなければなりません。そのための現実的な解決策がクラウド活用です。クラウドは「使ったほうがいいもの」ではなく、もはや「なくてはならないもの」になりました。ぜひクラウドの見方をこのように変え、新たな顧客体験を生み出していただきたいと思います。
出典:日経コンピュータ2021年4月1日号の特別広報企画「ニューノーマル時代を勝ち抜くDXの神髄」から転載