お客様の声を事業成長の力に変える "攻めのマーケティング"でより一層のカスタマーサクセス実現へ

アナログな運用体制から脱却するためにZendeskとAmazon Connectを導入し、問い合わせ対応の効率化と顧客対応品質の向上を実現しました。電話対応をデジタル化しKPIの可視化により改善点を明確化。迅速な対応が可能になり、顧客満足度の向上に繋げました。今後はお客様の声を活用したマーケティング施策にも取り組み、より一層のカスタマーサクセスの実現を目指します。

2024.06.26 掲載

日本を代表する老舗百貨店を運営する株式会社 大丸松坂屋百貨店は、手書きの応対用紙によるアナログな運用を続けてきたコンタクトセンターにZendeskを導入。サーバーワークスが得意とするAmazon Connectとの連携に加え、ECサイトの顧客受注情報との連携により、問い合わせの7割を占める電話対応を大幅に効率化した。Zendesk上でKPIが可視化されたことで、明確な根拠を持って必要な改善に取り組めるようになり、中長期的には電話対応時に拾ったお客様の生の声をマーケティングに活用する計画も進めている。

事例のポイント

お客様の課題
  • コンタクトセンターのアナログな運用体制による生産性の低さ
  • 情報の分散管理により重要な指標分析も手集計で行わざるを得なかった
  • アナログ対応による対応スピードの遅れと待ち呼の増加
課題解決の成果
  • 問い合わせ対応の効率化と品質向上
  • オペレーターの対応状況とパフォーマンスの可視化
  • 顧客満足度と自己解決率の向上
お客様の声を事業成長の力に変える "攻めのマーケティング"でより一層のカスタマーサクセス実現へ

株式会社 大丸松坂屋百貨店様

2010年、大丸と松坂屋が合併して誕生。大丸9店舗、松坂屋4店舗を中心に、全国に分店・関連会社を含む15店舗の百貨店を運営している。300年、400年というその長い歴史をつなぐ上で、いつの時代もお客様の生活をより豊かにする新しい価値を提案している。

お話を伺った方:
株式会社 大丸松坂屋百貨店 
本社 経営戦略本部 DX推進部 デジタル事業推進担当 マネジャー 
森健太郎氏

本社 経営戦略本部 DX推進部 デジタル事業推進担当
木村崇文氏

本社 経営戦略本部 DX推進部 デジタル事業推進担当
安藤滋氏

  • この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。

目次

Zendesk + Amazon Connectソリューション導入の背景と課題

株式会社 大丸松坂屋百貨店は、コロナ禍で従来の店舗ビジネスが打撃を受けるなか、タッチポイントの一つであるeコマースの重要性を再認識。ECサイトの売上急増を追い風に、コンタクトセンターにおけるアナログで複雑な運用の改善へと踏み出した。

株式会社 大丸松坂屋百貨店 本社 経営戦略本部 DX推進部 デジタル事業推進担当 マネジャー 森健太郎氏は、こう振り返る。
「2018年頃からコンタクトセンターへのCRM導入を提案する動きはあったものの、当初はコストを理由になかなか社内理解が進みませんでした。VOC(Voice Of Customer)を取り込んで攻めのマーケティングを実現する狙いでしたが、会社にとっては大きな投資であり、それだけでは理解を得にくい現実もあります。契機となったのはコロナ禍です。ECサイトの売上増加に比例して変動費としての経費が膨らんでいき、その変動比率を抑えるための解決策としての期待が経営判断を後押ししたようです。」

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森 健太郎氏

同部署 木村崇文氏は、「当時の当社コンタクトセンターは昨今のデジタル化の進展および業界標準とも乖離したアナログな運用体制であり、生産性を上げられる状況にありませんでした」と語る。それもそのはず、電話での問い合わせ内容はすべて応対用紙に手書きで記録。そのまま紙で管理されており、可視化とは程遠い状況にあった。

「顧客対応履歴はすべて紙で管理、顧客対応はビジネスフォンと一般的なメーラーで行い、重要な指標分析も紙やビジネスフォンのカスコン上のデータをもとにエクセルで手集計している状況がありました。顧客対応に必要な情報が各所に散在しており、結果的に対応スピードの遅れに直結。明確な課題事項として認識しており、社内のみでなく現場で直接対応をする業務委託先からも、デジタル化を望む声が上がっていました」と木村氏。繁忙期には電話が1か月で1万件にも及ぶといい、待ち呼が増えるのも無理はない。対応品質を高めるためにも、旧態依然とした運用からの脱却は急務だった。

Zendesk + Amazon Connectが選ばれた理由

社内のデジタル化の波、カスタマーサクセスへの取り組み、意識改革に押される形で、解決策の検討を始めた同社は、問い合わせ対応に必要な情報を単一の画面上で一元管理できるほか、カスタマイズを最小限に抑えつつ複雑なアナログ運用をデジタル化できる製品であるとしてZendeskを高く評価。実店舗からオンラインまで多様なタッチポイントを持つ同社として、長期的な視点での効果にも着目していた。

「同じようにアナログな運用体制を取っている他部門にも段階的に導入を進め、お客様の声を丁寧に拾い上げて一か所に集約する仕組みを構築できれば、グループ全体で品質向上の取り組みにつなげていくことができます。Zendeskがもたらすビジネスインパクトへの期待が経営陣の心を動かしたのだと思います。」(森氏)

同社は、2022年8月、最新のクラウド技術を組み合わせた次世代コンタクトセンターの実現に向けてプロジェクトを始動。電話、メールでのお問い合わせをZendeskに集約すると共に、CX向上を目的としたFAQサイトの改善、チャット対応の開始、AWSが提供するクラウド型コンタクトセンターサービスAmazon Connectとの組み合わせでコールセンターの変革を目指した。ZendeskとAmazon Connectとの連携は、AWS環境の構築において同社とすでに信頼関係にあったサーバーワークスが担当。同じ組み合わせでグループ会社に導入した実績もあり、運用上の知見やノウハウが溜まっていることへの安心感も十分だった。

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ZendeskとAmazon Connectを連携

現場が抱える課題の洗い出しから始まったプロジェクトについて同部署 安藤滋氏は、「現場に入り込んで実態を把握した上で、担当者の理解と納得感が得られやすい形を探りながら、現場にフィットした運用のあり方を検討していきました」と語る。

また、プロジェクトを進める中で発生する課題は速やかに関係者にフィードバックし、必要に応じて修正と改善を実施。こうしたコミュニケーションを重視した柔軟でインタラクティブなアジャイル型のアプローチが、本稼働まで6か月という短期間での実装を可能にしたと言える。

Zendesk + Amazon Connect導入の効果

導入後は、従来の電話とメールに加え、複数のお客様から同時対応が可能であるという理由でZendeskによるチャット対応もスタートした。電話での問い合わせはAmazon Connect経由でZendeskに着信。Zendesk上で自動的にチケットが起票されるようになり、コールセンターから応対用紙の山が消えた。それだけではない。ECサイトの顧客受注管理システムとの連携により、入電時には直近の会員情報、注文情報がZendesk上に自動的に表示されるため、通話時間が大幅に短縮。「電話に出てすぐに『○○様ですね』と言えるだけでなく、お客様の履歴情報に速やかにアクセスできるようになったことで、間違いなくサポート品質は高まっています」と安藤氏。ZendeskとEC受注管理システム間でのお問い合わせ対応履歴の相互連携の仕組みも実装し社内での情報共有もスムーズに行えるようになった。

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オペレーターの対応画面イメージ

また、Amazon Connect上で、ログインしているオペレーターの対応状況が手に取るようにわかるようになったことで、「今までどれだけのお客様をお待たせし、ご迷惑をおかけしていたのかを痛感しました」と安藤氏が語るように、タイムリーに実態を把握できるようになった効果は大きい。「Zendeskで作成したダッシュボードは、問い合わせ対応における重要なKPIを追うためのものと、管理視点でコールセンターのパフォーマンスを評価するものと2種類あり、業務委託先に対してもより具体性のある改善策を提案できるようになりました。」(安藤氏)

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安藤 滋氏

「以前は定性的な情報だけが頼りで、事実関係がエビデンスとして確認できないところで無駄に確認の時間を要していましたが、稼働状況も含め見える化したことで、業務委託先のみではなく、社内の関係部門とも同じ視点で品質改善に向けた話が出来るようになったこと、加えてZendeskの機能で顧客満足度として、お客様の生の声が拾えるようになったことも、可視化の大きな成果であると思います。」(木村氏)

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木村 崇文氏

一方、カスタマーサクセスの実現に向けた検索機能の強化にも、百貨店としての心遣いとこだわりが伺える。同社は、ECサイトの会員にご高齢のお客様が多いことに配慮し、AIボットによる質問応答システム「アンサーロボ」とZendeskを連携。検索時のワードの揺らぎに対応し、より最適かつ高精度なFAQ検索結果の提供を可能にしたほか、チャットウィジェット型のAIボットをFAQサイト内に貼り付けることで、自己解決できなかったお客様がシームレスにWebフォームでの問い合わせに遷移できるようにした。

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Exploreで問い合わせ状況を可視化し対応品質を改善

今後の展望

同社では、注文件数の増加に伴い、問い合わせ件数も日々相関して増え続けている。百貨店としてのホスピタリティを損なうことなく、自己解決率を向上させることでの問い合わせ件数の削減に向け、FAQサイトの拡充はもちろんのこと、Zendeskのプロアクティブメッセージを活用する計画も進んでいる。特定のページで滞留しているお客様に先回りして必要な情報を提示することで、予測可能な問い合わせを減らす狙いだ。

「Zendesk + Amazon Connectの導入により、問題を特定し、原因を調査し、解決策を検討するための判断材料を手に入れた今、お客様の満足度を高めるための取り組みにおいてさまざまな可能性が拡がっています」と安藤氏。「情報のリアルタイム性と正確性が高まり、課題を深掘りできるようになったおかげで、自信を持って施策を進められます」と語る森氏も、「これまでは問い合わせ対応の精度を上げて満足度を高めることが一番の目的でしたが、今後はお客様の声を事業成長の力に変える”攻めのマーケティング”に踏み込んでいきたいですね」と意気込みを覗かせる。通話記録をもとにテキストマイニングを行った結果をマーケティング情報として共有し、グループ全体でサービスの拡充につなげていくといった構想もその一つである。プラットフォームとしての安定稼働はもちろん、こうしたカスタマーサクセスの実現に向けた活用の拡がりにおいては、サーバーワークスとのさらなる連携に期待がかかる。

新しい百貨店の形を目指して挑戦を続ける大丸松坂屋百貨店。百貨店の存在意義がどのように変化しようとも、お客様の幸せに寄り添う姿勢は揺るがない。Zendesk + Amazon Connectは新しい時代にふさわしいCRMプラットフォームとして、お客様の声に基づいた良質な顧客体験の創出を支えていく。

担当プロジェクトメンバー

内村 和博
アプリケーションサービス部 ディベロップメントサービス2課
内村 和博
Web アプリケーション・インフラエンジニア/プロジェクトマネージメントの実務経験後、サーバーワークスへ入社。
Web サービスの AWS 移行技術支援、DB EOL に伴う AWS 移行支援、機械学習を用いた Web サービス機能開発支援、Amazon Connect を用いたシステム開発支援などの案件にPMとして従事。
水垣 岳志
サービス開発部 サービス開発課
水垣 岳志
2019年にサーバーワークスに入社し、主に Amazon Connect・サーバーレスアプリケーションの開発案件に従事。その後は部署異動し自社サービスの開発・保守・運用に従事。アプリケーション開発寄りのエンジニア。現在は AWSインフラ・フロントエンド・バックエンドと格闘中。AWS SAM・AWS Lambda が好き。
森田 圭城
アプリケーションサービス部ディベロップメントサービス2課
森田 圭城
2021年にサーバーワークスに入社し、入社後は主に Amazon Connect・サーバーレス開発案件に従事。エンジニア・PM の修行中。好きなAWSサービスは CloudFormation ・Lambda・DynamoDB。

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