AWS Organizationsのベストプラクティスに則った基幹システムのAWS移行を、コストマネジメントと共に完遂
株式会社ハルメクホールディングス様
50代からの女性がよりよく生きることを応援するため、様々な事業を展開。主軸となる雑誌「ハルメク」は、販売部数約46万部(日本 ABC 協会発行社レポート(2023年1月~6月))と、日本で一番読まれている女性誌である。その読者の要望に応えるファッションアイテムやコスメ、体や生活の悩みに対応した生活用品を提供する通販事業や店舗事業を運営。さらにシニア市場に特化したコンサルティング・広告代理事業なども行っている。
お話を伺った方
- 森 丈生 氏
- 株式会社ハルメクホールディングス
執行役員(CIO・システム管掌)兼システム部長 - 石川 泰啓 氏
- 東京システム運用課 課長
- 守屋 直揮 氏
- システム開発課 シニアエキスパート
- 本庄 誠 氏
- システム開発課 シニアエキスパート
- 平田 祥晃 氏
- システム開発課
事例のポイント
Before
お客様の課題
- オンプレミス環境の物理的な保守対応から解放されたい
- 事業の急成長に対してオンプレミスによるインフラ環境では柔軟に対応できない
- AWSアカウント複数運用のためガバナンスやセキュリティを強化したい
- AWS移行において、当初の計画よりも多額の費用が発生するリスクがあった
- 複数のアプリやサービスの監視を横断的に行いたい
After
課題解決の成果
- AWS への移行による担当者の負荷軽減
- AWSへの移行による基幹システムのパフォーマンス向上、安定化による事業への貢献
- AWS Organizationsによるアカウントの統合管理基盤の構築
- AWS MAP Liteによるコストの削減
- New Relic 導入による監視体制の最適化
導入サービス
Index
読者の声の探求により急成長するも、10年以上経過した基幹システムに課題
「年を取るのも悪くない」―そう思える社会の実現を使命とし、50代からの女性がよりよく生きることを応援するハルメクホールディングス。「情報コンテンツ」「コミュニティ」「物販」の3事業を展開しています。情報コンテンツ事業の主軸となるのが、シニア女性の心豊かな生きかた・暮らしかたを応援する雑誌「ハルメク」で、ほかにもWebサイト「ハルメク365」も提供しています。コミュニティ事業ではシニア女性のつながりの場としてオンライン・オフラインのイベントや講座・旅行などを提供。これらの読者・参加者のリアルな声をもとに展開するのが物販事業で、オリジナルのファッションアイテムやコスメ、食品などを開発し、自社ECサイトやカタログ通販、リアル店舗にて販売しています。
雑誌「ハルメク」の前身は1996年3月創刊の「いきいき」。株式会社ハルメクホールディングス 取締役の山岡 朝子氏が2017年に編集長に就任後、徹底した読者インサイトの探求を続けた結果、14万ほどだった定期購読者数は、約46万部と女性誌販売部数No.1(日本ABC協会発行社レポート:2023年1月~6月)となっています。
ビジネスの急成長に伴い、雑誌購読や通販機能など、サプライチェーンマネジメントを司る基幹システム「IBM Sterling」に課題が生じていました。そこで2022年春頃、これまでオンプレミス環境に展開した基幹システムを、クラウド環境へ移管する方針を固めました。2022年6月に執行役員(CIO・システム管掌)兼システム部長に着任した森 丈生 氏は、当時の課題について次のように語りました。
「従前のオンプレミス環境ではシステムの増強やバージョンアップをしようにも物理的なキャパシティ制限のために実施が困難というような状況が続いていました。結果としてバッチ処理に数十時間要してしまう、アプリケーションに追加された新しい機能が使えない、といった課題を抱えていました。クラウドであればインフラの増強が柔軟に対応できるため、当社事業の急成長に伴うシステム増強ニーズにも十分対応できると考え、クラウド移行に舵を切りました」 (森氏)
従来の基幹システムは2012年ごろに設置されたもので、当時の雑誌の購読者数は12万人ほどでした。当時基幹システムの配備を担当した、東京システム運用課 課長 石川 泰啓 氏は「15万人くらいまでのキャパシティでインフラを手配しました。そこからほとんど構成を変えずに50万人まで増えてしまって、機能の追加などができず、現場と相談しながら手動で運用している状況でした」と話します。
ハルメクホールディングスがIBM Sterlingを移管するクラウド環境として選んだのは、AWS です。選定の理由として森氏は「私たちが利用している基幹システムには、動作実績のある他社製のクラウドサービスがあり、システムベンダーからも薦められました。しかし、費用面や技術者の学習コスト、将来性も考慮して AWS が良いと考えました」と話しました。
全社システムのAWS移行パートナーとしてサーバーワークスを選定
移管対象であるIBM Sterlingでは、国内においてオンプレミスから AWS へ移行した実績がありません。そこで森氏は、以前からかかわりのあったサーバーワークスに相談します。その背景について森氏は「私は、前々職で2015年ごろからサーバーワークスと仕事をしてきました。その間、大規模で難易度の高いプロジェクトをいくつも経験してきましたので、私たちの基幹システム移管を担当してもらいたいと考えていたのです」と説明しました。
サーバーワークスのエンジニアは、単にクラウド環境の設計・構築にとどまらず、通信事業者やルーターベンダー、アプリケーションベンダーなどとも積極的に連携してシステムの全体最適化に努め、国内初となるIBM SterlingのAWS への移管を実現しました。また稼働後にデータベースの高負荷に起因した問題が発生した際には状況に応じた継続的なスペックの最適化を行いアプリケーションベンダーと共同でパフォーマンス改善にあたりました。森氏は、「インフラ面での不安が少なかったので、アプリケーション側に注力できたのはすごくよかったです」と語りました。
基幹システムの移管だけでなく、社内システム全体のインフラ管理についても改善が必要でした。ハルメクホールディングスでは元々Webサイト「ハルメク365」など複数のシステムでAWSを利用しており、AWS アカウントを複数運用している状況でした。さらに将来的には、あらゆるシステムをAWSに集約していく方針となったため、ガバナンスやセキュリティ面での強化も求められていたのです。そこでサーバーワークスでは、複数のAWSアカウントを一元管理できるAWS Organizationsの利用を提案します。
インフラ面を担当する、システム開発課 シニアエキスパート 守屋 直揮 氏は「AWS への移設に際してはユーザー権限設定や本番と開発環境の分離などセキュリティ強化やログ管理の省力化を行いたいと考えていました。私はいくつかのAWSの認定資格を持っており、前職でAWS Organizationsの利用を検討していたので機能概要は知っていたものの、有効的な活用方法までは把握できていませんでした。今回サーバーワークスから将来を見据えた具体的なAWS Organizations利用の提案を受け、私たちの課題解決に最適なソリューションであると改めて実感することが出来ました」と述べました。
サーバーワークスはAWS Organizationsの提案に加え、クラウド移行の準備状況やコストを評価し、アクションプランを作成する AWS Migration Acceleration Program Lite(MAP Lite) アセスメントサービスも提供しました。さらに、導入後のAWS請求代行サービスやAWS運用代行・監視サービスなど、トータルなサポートを提供することとなりました。
クラウド環境においては、パフォーマンスが不足した場合にスケールアップやスケールインが容易である反面、安易な増強の結果想定外にコストが増加してしまうことも起こり得ます。サーバーワークスのエンジニアは、システムベンダーをサポートしながらシステムやプロジェクトの最適化を施しました。継続的なコスト削減を実現し、本来必要な機能に投資を集中することが健全だと考え、AWS プレミアティアサービスパートナーとして、最大限の支援制度を適用しました。AWS 責任共有モデルに基づくシステムベンダーとの役割分担、オンプレミスと AWS のハイブリッドな環境下においてもセキュアで高速なネットワーク設計・実装、AWS のCI/CDやCloudFormationの活用など、プロジェクトにおける生産性最大化のためのガイダンスを提供しました。さらに、NewRelicによる各種システム状況の可視化の実現や、AWS Compute Optimizerなどを活用したワークロードに応じた資源最適活用・サステナビリティへの考慮に至るまで、お客様・システムベンダーと一体となり、移行プロジェクトの全ライフサイクルを支援しました。
基幹システムの安定化を実現。さらなる最適化を目指す
2022年6月から検討をはじめた基幹システムのAWSへの移管は、2023年8月に完了します。アプリケーション運用面での効果について石川氏は「バッチ処理のスピードが格段に上がりました。中には20時間ぐらいかかっていたものが、4〜5時間で終わるようになりました。以前の環境では、バッチ処理中にお客様からの注文がたくさんくるとシステムが止まっていましたが、そのようなトラブルはゼロになり、注文を入力するオペレーターの方たちもストレスなく使っていただいています。また物流面では、以前は商品出荷を待つ作業員を集めても作業が止まって待機していただくこともありましたが、現在はタイムリーに人員計画できるようになっています」と説明しました。
システムの安定化により、働く人々の環境改善に加え、商品出荷の効率化が達成されました。これは、エンドユーザーにとっても好影響を与え、事業全体に大きなインパクトをもたらしました。その効果についてハルメクホールディングスの経営陣も評価しています。森氏は「以前は、年に2回行われるセールの期間を無事に乗り切れるかどうかについて、多くのメンバーが心配していました。AWSに移管後、2023年11月から始まったセールでは問題なく動作しました。社長も2023年の振り返りの場で、達成できた大きな取り組みとしてシステムの安定化を挙げました」と話しました。
ビジネスへの貢献を支え続けるインフラ運用・監視の効率化も実現しています。サーバーワークスは、新たにシステムモニタリングツール「New Relic」の導入も行いました。
守屋氏は「オンプレミス環境は、専門技術者が現地に行かなければいけないという物理的なハードルがまずあります。リモートワークワークと相性が悪く、リモートから社内NWにアクセスしてオンプレミスの操作を行う際のセキュリティ管理も課題に感じていました。今回のAWSへの移管によってそれらの問題は解決しました。AWSは利用者がどこにいても管理が可能であり、New Relicを通じてシステムパフォーマンスを俯瞰的に確認できるようになったため運用効率が格段に上がりました」と語ります。
守屋氏とともにインフラ面を担当したシステム開発課の平田 祥晃氏は、「AWSの導入により様々な効果がありましたが、特に物理設備の運用から解放されたことが大きな効果と感じています。以前はサーバーの故障など不具合が生じると、メンテナンス担当者は昼夜問わず電話が鳴って対応しなければいけませんでした。そのような対応が必要なくなったことは労務管理の面でも喜ばしいことです」とコメントしました。
AWS Organizationsによるマルチアカウントの管理や、継続的なコスト削減提案も効率良い運用に役立っています。システム開発課 シニアエキスパート 本庄 誠 氏は「AWS Organizationsを使い始めた当初は難解と感じましたが、今では非常に便利に活用しています。AWSアカウントを追加するときにも予めポリシーが明確に設定されているため、作業が楽になりました。コストに関しては、定例会でサーバーワークスの担当者からAWS利用料の予算超過の連絡を受けることが何度かありました。その際、不要と思われるリソースをリストアップした資料を提供いただき、コスト削減効果が高いサービスから順に削除するよう具体的なアドバイスを迅速に受けることが出来ました。MAP Liteに加え請求代行サービスにより、コストのバランスが改善されています」と話しました。
ハルメクホールディングスでは、基幹システムの安定化を果たした後も、全社システムの改善を継続して行う予定です。今後3年以上をかけて、基幹システムをはじめ現在稼働しているシステムのほとんどを刷新する計画です。森氏は今回の移管プロジェクトを振り返るとともに、今後の展望について次のように語りました。
「サーバーワークスの仕事は期待以上です。アプリケーションベンダーが提案する AWS の構成をレビューし、多くの有益なアドバイスを提供してくれます。改善提案だけでなく、セキュリティ・ガバナンス面やコスト面での助言やサービスを提供してくれました。他社と比較して、支援の範囲が広く、多くの領域でフォローを受けられる点が大きな魅力です。AWS への移設はまだスタート地点で、ここから全システムの刷新と次期システムの導入という形でプロジェクトが始まります。さらにサーバーワークスの腕の見せ所となるはずですので、これからもぜひお願いしたいです」
担当プロジェクトメンバー
※ この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。
選ばれる3つの理由
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Reason 01
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提案力とスピード- 導入実績
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パートナーとしての技術力 -
Reason 03
いち早くAWS専業に
取り組んだ歴史