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SAP ERP移行の事例

導入事例(株式会社京阪ビジネスマネジメント様)

株式会社京阪ビジネスマネジメント様

明治39年(1906)年に会社を創立した京阪電鉄。現在は京阪ホールディングスの傘下で大阪、京都、滋賀に路線を展開する鉄道事業、鉄道沿線を中心とした不動産業、流通業、レジャー・サービス業など幅広いビジネスを行っています。
株式会社京阪ビジネスマネジメントは管理業務を担う子会社として2004年に設立されました。

導入の概要

大阪と京都を結ぶ京阪電鉄をグループに持つ京阪ホールディングスでは、SAP ERPのサーバー環境のリプレースにあたり、災害にも耐えうるインフラを求めパブリッククラウドを選択しました。

検討のきっかけ

多様なビジネスを展開する京阪グループでは、グループ全体の業務効率化のため、2018年4月にSAP ERPのグループ展開を完了。そして2018年5月からは、次期サーバーリプレースのタイミングに向け、柔軟性があり信頼性の高い新たなインフラ環境の検討を開始しました。

当初はオンプレミスのままサーバー更新、またはプライベートクラウドの利用を検討していました。パブリッククラウドはデータを持ち出して大丈夫なのか、さらには本当にコストが低くなるかなどの不安もあり、なかなか踏ん切りがつきませんでした。しかし、SAP ERPの新たなインフラに悩んでいる中、2018年6月に大阪府北部地震が発生し、さらに2018年9月には、台風21号により関西地域にも大きな被害が出ました。これらの災害を受け、改めてBCP(事業継続計画)が重要な要件であると考えるようになりました。

京阪グループのITシステムを運用について、さらなるBCP強化のための環境整備コストが課題でした。パブリッククラウドならば、データセンター施設の冗長性や可用性は全てサービス事業者に任せられます。またコストも検証し、パブリッククラウドに優位性があると確認できました。こうして、次期SAP ERPのインフラにはパブリッククラウドが最適との判断をしたのです。

その上でどのパブリッククラウドサービスを選ぶかを決める際に重要となったのが、サポート体制でした。クラウドの環境構築からSAP ERPの移行を含むプロジェクト全体を、クラウドに精通した信頼できるクラウドインテグレーターにサポートしてもらえることがAWSを採用する決め手となりました。

サーバーワークスを選んだ理由

AWSを検討し始めた際、京阪グループではまずエンタープライズ企業でのAWS環境構築、運用実績が多いサーバーワークスに相談しました。すると、SAP ERPの移行ならばと経験豊富な関連会社BeeXを紹介されました。すぐにBeeXのトップの方が来社し、我々の疑問にAWSではこうすれば解決できますと提案してくれました。

AWSに詳しい会社やSAP ERPを得意とする会社はそれぞれありますが、双方に詳しい会社はほとんどありません。AWSの最上位パートナー認定を得ているサーバーワークスとSAP ERPのAWS移行に特化したサービスを展開するBeeXという協業体制があれば、安心してSAP ERPのAWS化に取り組める、そう感じました。

AWSにしてよかったこと、そして導入後の効果

京阪グループ43社で利用するSAP ERP環境をAWSへ移行するプロジェクトは、BeeXを中心としたサポート体制でスタートしました。まずはAWS上にWindows Server 2016のサーバー環境を構築、そこでSAP ERPのアプリケーションを稼動させ、データをオンプレミスから移行します。SAP ERPの周辺システムについては、移行ツールであるCloudEndureを利用しました。SAP ERP以外にもオフコン上で独自開発した資材管理システムがあり、これはWindowsベースのアプリケーションを新規に開発しAWSに載せます。

SAP ERPのAWSへの移行作業は、新しいデータセンターの環境を1から構築するようなものでした。とはいえそのための全ての作業がPCからできることは、これまでの経験とは大きな違いでした。実際の移行作業ではBeeXと一緒にAWSの環境を設計し、それをすぐにAWS上で構築、検証し最適かどうかを確認しました。AWSならばすぐに環境を作って試すことができ、作った環境が良くなければそれを捨て次を検討するのも容易です。こういったことを繰り返すクラウド流のアプローチは、かなり新鮮なものでした。

AWS化に伴い既存環境の精査ができたのも、もう1つのメリットでした。SAP ERP周辺システムの要件や用途を改めて確認することとなり、コスト観点からも見直して最適化できたのです。またクラウドの柔軟性のメリットもありました。本番への切り替え時だけサーバースペックを倍にし、移行時間を大幅に短縮できました。こういった工夫は、クラウドならではです。

株式会社京阪ビジネスマネジメント

もちろん苦労もありました。たとえばセキュリティ確保のためにSAP ERPのサーバー上にファイヤーウォールを構築していましたが、そこで実現していたことをAWSのセキュリティグループの機能で実現する必要がありました。ファイヤーウォールの機能が、そのままセキュリティグループに置き換えられるわけではないからです。

ファイヤーウォールを経由したSAP ERP環境へのアクセスも置き換えました。これについては、セキュアな仮想デスクトップであるAmazon WorkSpacesを採用しています。Amazon WorkSpacesの利用は安全なアクセス環境のシンプル化、WindowsのCALがなくなることによるコストの最適化も実現しています。これらの対応ではサーバーワークスも貢献しました。30件くらいはサポートチケットを切り、サーバーワークスに迅速に対応してもらいました。目の前の問題だけでなく、将来的な運用を見据えた総合的な視点でアドバイスを受けることができました。

今後の展開について

AWSへの移行は、現状のSAP ERPの運用の見直しにもなりました。見直して効率化するために必要な機能はAWSに揃っています。それらとサーバーワークスのCloud Automatorを組み合わせることで、バックアップやインスタンスの停止など運用の一部の自動化も実現されています。

またAWS化に関わったことで、社員の意識にも変化がありました。鉄道という社会インフラ事業を行っていることもあり、京阪には比較的保守的な考えの人が多いです。しかしAWSのメリットの一つである俊敏性の恩恵を最大限受けるためには、そのような人たちのスピード感を変える必要がありました。そのためスピードを上げすばやく意思決定することが、プロジェクトの共通認識となったのです。プロジェクトを離れてもその感覚を持ち続けられるよう、AWSをより積極的に活用する体制の構築を検討していきます。

京阪グループでは、SAP ERP環境のAWSへの移行が終了しました。今後はクラウドの良さをさらに引き出すために、クラウドネイティブなサービスや機能を積極的に利用していきたいと考えています。個人的な思いもありますがこれからはAWSファースト、さらにはサーバーレス・ファーストでやっていきたいです。そうすることで、AWSへのリフトからクラウドネイティブへシフトし、企業のデジタル変革にも貢献できるはずです。

その最初の取り組みとして、京阪電鉄の60の駅において、深層学習技術を使用したテキスト読み上げ機能「Amazon Polly」を使ったアナウンスの仕組みを構築しています。これを利用することで、災害時にも原稿データを用意するだけで駅構内に多言語対応のアナウンスを自動配信できます。この仕組みの構築では、サーバーワークスのサポートを受けながらAmazon PollyだけでなくAWS Lambdaなども用いたサーバーレスの仕組みを採用し、迅速かつ安価な環境構築が実現しています。今後もこういったことに積極的に取り組むためにも、サーバーワークスには積極的なAWS活用提案をして欲しいですね。

※ この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。

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