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Amazon Connect導入の事例

導入事例(パルシステム生活協同組合連合会様)

パルシステム生活協同組合連合会様

「パルシステム生活協同組合連合会」は、首都圏を中心とした地域生協とパルシステム共済生活協同組合連合会が加盟する連合会組織です。食を中心とした商品の供給事業や共済・保険事業、福祉・電力事業などを展開しています。

システム導入の背景、概要

パルシステムでは国産・産直・環境にこだわり、安全・安心な食材を届ける生活協同組合の宅配サービスを展開しています。新型コロナウイルス対策で発令された緊急事態宣言により、パルシステムもさまざまな影響を受けました。同社のコールセンターは北海道札幌市にあり、外出自粛要請により出社できないスタッフも出ました。一方で「問い合わせや入電は4、5倍に増え、少ないスタッフでは捌ききれない状況もありました」と言うのは、パルシステム コールセンター部門 事業本部 事業部 組合員の声推進課 課長の丸山智昭氏です。急遽関東近県62拠点の配送センターに臨時で電話窓口を設置し、物流も増加し現場配送業務も厳しい中、緊急の問い合わせ対応も実施したのです。

緊急事態宣言後に急増したパルシステムの電話対応で役立ったのが、Amazon Connectで実現されたIVR(自動音声対応)注文受付「パルシステム自動電話注文ダイヤル」(以下:自動電話注文ダイヤル)でした。これは、従来オペレータースタッフが電話対応していた注文処理を、「実際のコールフローを踏襲し、IVRで無人対応できるようにしたものです」と説明するのは、パルシステム システム部門 物流・情報システム本部 ITサービス部インターネットサービス課 課長の直井勇樹氏です。

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パルシステムのコールセンターには、注文受付と問い合わせ受付の2つの業務があります。コールセンターには、注文受付だけに対応するオペレーターと、注文も問い合わせも対応するマルチスキルオペレーターがいます。注文が増えれば、マルチスキルオペレーターは注文受付対応に時間を取られ、問い合わせの応答率が低下してしまいます。そこでオペレーターが対応する注文受付を減らし「マルチスキルオペレーターが、問い合わせ対応に時間を割けるようにしたいと考えました」と丸山氏は言います。

この課題解決のために導入したのが、自動電話注文ダイヤルだったのです。

システム導入依頼の経緯

自動電話注文ダイヤル構築の検討は、新型コロナウイルス対策が始まる10ヶ月ほど前、2019年4月頃に始まりました。パルシステムではAWSを利用していたこともあり、提供当初からAmazon Connectが活用できるのではと直井氏は考えていました。検討を開始した頃にはちょうど、サーバーワークスがAmazon Connectのハンズオンセミナーを開催、直井氏はそれに参加し何ができるかを確認します。

通常、IVRのシステムを構築しようとすれば、ピーク時に合わせ物理電話回線を用意しオンプレミスの環境で構築することとなります。この構成はコスト的にはかなり高くなります。Amazon Connectであれば、予測が難しいピークに合わせ事前に環境を用意する必要はありません。利用分だけの従量課金で使え、コストの最適化が可能となります。またIVRの処理もクラウド上の管理画面から自分たちで確認でき「他の仕組みと異なりブラックボックス化しないのも良いと考えました」と直井氏は言います。

Amazon Connect採用のもう1つの理由が、AWSの他のサービスと連携させやすいことです。AWSにはAlexa for Businessなど、さまざまなAI技術があります。それらを活用すれば、より利便性の高い自動応答の実現も可能になり、将来性が高いと考えたのです。これらの理由から、クラウドサービスで迅速に初期コストも安く始められる、Amazon Connectを活用して、自動電話注文ダイヤルの仕組みの構築を決めます。

サーバーワークスを選んだ理由

パルシステムは、構築パートナーにサーバーワークスを選びました。「サーバーワークスはAmazon Connectについてはもちろん、他のAWSに関する知識やノウハウも豊富で信頼ができました」と直井氏。また技術窓口だけでなく営業窓口のレスポンスも良く、スムーズに話が進められたとも言います。

システムを導入してよかったこと

パルシステムでは2019年11月までに自動電話注文ダイヤルの機能を一通り完成させ、12月には内部でテストを行いました。その後2020年1月から一部組合員での利用を開始。そして新型コロナウイルス対策の状況を踏まえ、当初予定の4月を前倒しして告知を行い、4月からは全ての組合員が電話注文ダイヤルを利用できるようにしたのです。

組合員からのコールが自動電話注文ダイヤルにつながると、まずは注意事項のアナウンスが流れ、続いて組合員の本人確認が行われます。次に注文対象の企画回あるいはカタログを確認し、注文品番号、数量を入れてもらいます。注文品入力が終われば、確認のために購入商品名が自動で読み上げられ、問題がなければ最終確認を行い注文が成立します。一連のIVRでの注文処理は、Amazon ConnectとAWS Lambdaを組み合わせることで人が一切介在することなく成立しています。

この自動電話注文ダイヤルの構築は、パルシステム側で整理したコールフローの情報を伝えて、サーバーワークスがそれを実装する形で進められました。さらに「運用面の整合性を取るところは、現場実務者を含めサーバーワークスにサポートしてもらいながら構築しています。結果的にはシンプルで分かりやすい仕組みが構築できました」と丸山氏は言います。

購入商品名の読み上げの機能では、一般的なものは特に問題はありませんでしたが、一部パルシステム固有の表現もあり、その読み上げ精度の向上のための調整が必要でした。それ以外は全体として大きな苦労はなく、自動電話注文ダイヤルの仕組みは順調に構築できたと直井氏は言います。

従来、パルシステムの組合員の利用者数はおよそ70万人でした。新型コロナウイルス対策で外出自粛が始まって以降は、新規の組合員が増え、さらに休止中から利用を再開した組合員もおり、80万人がパルシステムを利用するようになりました。さらに注文そのものも増えており、ピーク時には前年対比で140%、それ以外でも平均して120%ほどの供給量となっています。

電話対応を行うコールセンターのオペレーターは、パルシステムには200名ほどいます。内90名から100名程度が、アクティブに電話対応する体制となっています。自動電話注文ダイヤル導入以前は、注文のピーク時にはオペレーターの数を増やすなどで、組合員の方をなるべく待たせないよう工夫もしていました。現状ではそういった工夫を特にすることなく、増加している注文も捌けているのです。新型コロナウイルス対策以降のコールセンターオペレーター業務の逼迫も徐々に解消し、各配送センターに臨時で設置していた問い合わせ窓口も廃止し、通常のコールセンター対応体制に戻しています。

システム導入後の効果

具体的な自動電話注文ダイヤルの効果は、新型コロナウイルス対策の対応で変動している状況もあり、明確な検証はできていません。とはいえ2020年4月の電話注文の内、約2割が自動電話注文ダイヤルでした。パルシステムではここ最近インターネット注文の「オンラインパル」の割合も増えており、電話での注文は前年比で20%ほど減少しています。その傾向の中で考えると自動注文も含め、2020年4月は前年と比べオペレーターの電話注文受付対応を約3分の2に減らせたと試算できます。

5月以降も引き続き自動電話注文ダイヤルの割合は増える傾向にあり「確実に自動電話注文ダイヤルに流れていると判断できます。緊急事態宣言で電話がつながり難い状況も発生していましたが、自動電話注文ダイヤルがあって本当に良かったと思っています。社内では今回のIVRの仕組みを”救世主”と呼んでいます」と丸山氏は言います。

今後の展開

今のところパルシステムでは、新規注文のみAmazon ConnectのIVRで対処しています。今後は「問い合わせ対応でもAmazon Connectを活用することを考えています。基幹システムと連携させ、欠品などの問い合わせも自動化が可能でしょう」と丸山氏。さらに、音声による注文の実現に向けたPoCも実施しており、「今はまだ技術的に難しいところもありますが、将来的には音声で直接自動注文することも検討したいです」と直井氏も言います。

パルシステム全体としては、インターネットにシフトしていますが、幅広い組合員の要望に対応するためにも電話対応が一定数は残ると考えています。またAlexaを使えば、コンシューマの世界では音声認識による自動注文も実現されており、パルシステムでも新たなユーザーインターフェイスの1つとしての音声の活用、AI技術を利用したさらなる自動化なども取り入れ、より便利な仕組みを構築することも検討されています。「今日のパルシステムの配達時間は何時とAlexaに訊ねると、きちんと答えてくれるような世界を実現したいと考えています」と丸山氏は言います。

AWSには日々機能が追加されており、ユーザー側でそれを全て把握することは難しいものがあります。以前はできなくても今なら実現できることが多々あります。より便利な組合員とのコミュニケーション手段を実現させるためにも、AWSの最新情報を提供しAWSをさらに使いこなせるよう提案をして欲しいと、直井氏はサーバーワークスに期待しています。

※取材日 2020年6月9日

※ この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。

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