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Amazon CloudFront導入事例

導入事例(東宝株式会社様)

東宝株式会社様

導入の概要

東宝がAWS上で運用していた映画上映館情報を一元的に提供するTOHO THEATER LISTでは、ヒット作の情報公開がされる度にアクセスが集中し、レスポンスが低下する課題を抱えていました。特に大ヒット作の情報公開時には、サイトでの情報配信が停止してしまう事態も発生していたのです。

2020年10月に誰もが知る超大ヒット映画の公開を控え、東宝では根本的なアクセス集中対策を検討しました。そしてTOHO THEATER LISTの特性を考え、採用されたのが高速コンテンツ配信ネットワーク(CDN)サービスのAmazon CloudFrontでした。

東宝株式会社について

東宝株式会社様
情報システム部
IT戦略室長
加茂裕之氏

東宝株式会社は映画、演劇、不動産経営という3つのビジネスを柱に、「健全な娯楽を広く大衆に提供すること」を使命とし企業活動を展開しています。2020年は新型コロナウイルスの影響を受けて苦しい状況が続きましたが、2020年7月に緊急事態宣言明け最初の封切映画が公開された際には、休業要請により映画鑑賞ができなかった多くの人々にご来場いただき大ヒットとなりました。改めて、生活の中で映画を観て楽しむことが求められているのだと痛感しました。
東宝では娯楽を広く人々に届けるため、これまでも積極的にITを活用してきました。中でもクラウド化には力を入れています。クラウドへのリフトはかなり進んでおり、既に8割ほどクラウド化を完了しました。一部ではシフトにも取り組み、サーバーレスの仕組みなどもいち早く活用しています。

クラウドプラットフォームにはAWSを採用しています。採用の理由の一つはコストです。使い続けているとサポート費用が増えるIT製品もありますが、AWSは使い続けるとむしろコストが下がります。AWSはサービスの豊富さ、拡張性の高さも魅力的で、その上で市場シェアが高く安心して長く使えると判断したのです。現状東宝では、自分たちの用途に合うクラウドサービスがあればそれを積極的に使います。また自社の要求にフィットするサービスがなければ、AWSを用い独自にシステムを構築する方針となっています。

Amazon CloudFront導入 検討のきっかけ

AWS上で独自構築しているサービスの1つに、東宝配給作品の上映劇場の情報を提供する「TOHO THEATER LIST(https://theater.toho.co.jp/toho_theaterlist/)」があります。各作品は個々でオフィシャルサイトを立ち上げていますが、上映劇場は毎週変化するため各サイトで個別管理するのは高負荷です。そこで、上映劇場の情報を一元管理しているのがTOHO THEATER LISTです。ユーザーは各オフィシャルサイトからTOHO THEATER LISTに遷移して必要な情報を得ています。

これまでもヒット作が公開されるとTOHO THEATER LISTのアクセスが急増し、表示が遅くなることはありましたが、サイトが止まるようなトラブルに発展することはほとんどありませんでした。

ところが、ついにその日が来てしまいました。2020年6月に名作アニメーション4作品がリバイバル上映されることになったのですが、これらの作品のオフィシャルサイトはもう存在しないため、上映開始一週間前にSNSで告知する際、TOHO THEATER LISTのリンクを貼り付けていました。

この時の反響は極めて大きく、TOHO THEATER LISTへのアクセスが一気に高まり情報表示ができなくなってしまったのです。しかも、この状況はすぐには収まりませんでした。東宝ではAWSのシステム構築、運用のサポートを依頼していたサーバーワークスに連絡し、急ぎ対策に取り組みました。一時的にAmazon EC2、Amazon RDSのスペックを上げ、Webサーバーの台数を増やした結果、情報発信の翌日に何とか復旧することができました。情報発信の当日には瞬間的に25万PVのアクセスがあり、名作アニメーションの人気の高さを改めて実感しました。

この後にもヒットが予測される映画の公開が控えていました。8月には超大ヒット映画の前売券販売が開始され、その情報が数日前の日曜21時に解禁されました。22時にはTOHO THEATER LISTへのアクセス集中が顕著となり、休日で家にいた私にも連絡が入りました。23時にはサーバーワークスと連絡をとってTOHO THEATER LISTのインフラを増強し、遅延状況を解消しました。この時もピークには9万PVを超えるアクセスがあったのです。

その後も情報を新たに出す度に、小さなアクセス集中の波が起こりましたが何とか持ちこたえました。しかしこの後にもTOHO THEATER LISTへのアクセス集中が確実に起こると予測されました。その度にインフラ増強で乗り切るのか、それとも根本的な対策に取り組むのかを社内で議論しました。自分たちの対応が大変というのもありますが、何よりもお客様が欲しい情報を欲しいタイミングで得られない状況はなくしたいと考え、サーバーワークスに根本的な解決策を提案してもらいました。

Amazon CloudFront導入

対策としてはサーバー台数を増やす方法と、高速コンテンツ配信ネットワーク(CDN)のAmazon CloudFrontを活用する方法が考えられました。サーバーワークスと検討し、TOHO THEATER LISTの特性から考え、CDNで課題が解決できると判断しました。

9月中旬までに社内調整を終え、サーバーワークスに構築を依頼しました。そして半月足らずの期間でAmazon CloudFrontの構成を設計し、構築が完了。これで何とか皆さんもよくご存じの歴史的超大ヒット作品の公開前に間に合わせることができたのです。

導入後の効果

アクセス集中に対し、Amazon CloudFrontは完璧としか言いようがありません。それまで事あるごとに急ぎ対応しなければならなかったのが、嘘のようにメンテナンスフリーになりました。管理者宛に飛んでくるアラートもなくなり、日常の運用の中でTOHO THEATER LISTのアクセス集中を気にする必要はなくなりました。

例えば2021年1月の超人気アニメ映画シリーズの情報解禁時に10万PVのアクセスが集中した際にも、サーバーのCPU使用率は30%程度までしか上がりませんでした。これはAmazon CloudFrontを導入する前では考えられなかったことです。効果は抜群で、その後もTOHO THEATER LISTは何ら問題なく稼動しています。

Amazon CloudFrontはコスト面でもメリットがあります。インフラのスペックを向上し対処すれば、その都度追加コストが発生します。AWSのリソースの柔軟性でコスト自体はそれほど大きくなりませんが、映画は製作に携わる関係者も多く、コストをどう処理するかの調整には毎回苦労します。Amazon CloudFrontはランニングコストもほとんどかからず、負担の痛みもありません。アクセス集中時に多くの人を巻き込んで調整するコストまで考慮すれば、都度調整の必要ないAmazon CloudFrontのコストメリットはかなり大きいと判断しています。

今後の展開とサーバーワークスに期待すること

東宝がAWSの導入を決めた当初、「将来的にオンプレミスから脱却したいならば、クラウドネイティブな考え方を持つパートナーを選ぶべき」とのアドバイスをアマゾン ウェブ サービス ジャパンから受け、それができるパートナー候補の中で最も親身に対応してくれる印象があったのがサーバーワークスでした。

今回のTOHO THEATER LISTのアクセス集中への対応でも、タイトなスケジュールの中でかなり無理な注文もしましたが、Amazon CloudFrontの効果をしっかりと調査した上で提案があり、選択に迷いはありませんでした。普段から気軽にかつ親身に相談に乗ってくれる頼れる存在です。

Amazon CloudFrontもサーバーレスコンピューティングのAWS Lambdaも、構築時にコストはかかりますがランニングコストは予想を遙かに下回り、改めてクラウドの良さを感じています。今後もこのようなクラウドネイティブ技術の良さを実感できる提案を、サーバーワークスには期待しています。

また、近年はスピードを求められることが多くなっているため、内製化の推進についてもサーバーワークスによる支援を期待しています。その際に自分たちでできることとサーバーワークスに委託すべきことの線引きをしっかりと行い、その上で、内製できるようにするための学びを得たいとも考えています。

※ この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。

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